日本最古の磨崖仏が祀られる、崖にめり込んだ『天開山 大谷寺』へ行ってみた

天開山 大谷寺

 栃木県宇都宮市の奇岩連なる山間部にある坂東三十三観音霊場の第十九番札所『天開山 大谷寺』にやってきました!!

 ここは、弘仁元年(810)に弘法大師によって開基されたと伝えられる古刹で、写真の通り崖にめり込んだ面白い寺院として知られております。

 「大谷寺」へと続く、平和観音像が祀られる大谷公園を経て紅葉と共にご案内致します。




▼参道

参道

 電車が走らない「大谷寺」へ自家用車で行くには3ルートあり、一つ目がダイレクトに寺横の駐車場に車を駐めて行くルート、二つ目が古代地下宮殿の様な絶景が観られる「大谷資料館」前に駐めて行くルート、三つ目が「大谷公園」に隣接する駐車場に駐めて行くルートです。

 今回は、三つ目の「大谷公園」隣接の駐車場から、平和観音を経て大谷寺に入りたいと思います。

まず、ご覧いただくのは写真右上の不安定な場所にある「岩」です。

天狗の投石

▼天狗の投石

 この岩は、天狗が投げたという伝説の残る「天狗の投石」です。

 この岩をよく観ると数本の貧弱なケーブルで落下しない様に固定されておりますが、巨大地震がくればこんなケーブルが役に立つのかどうかと思ってしまうギリギリを保っております。

▼大谷公園

大谷公園

 巨大な「平和観音像」が立つ『大谷公園』に到着です。

 この公園は、市街地の西約7kmにある宇都宮県立自然公園内に位置します。 

 元々は特産の大谷石を産出する採石場でしたが、世界平和を祈念した平和観音が刻まれた後に昭和31年に開園しました。

 周囲の起伏に富んだ地形と松や広葉樹の自然林と相まって、独特の景観をかもし出している異色の公園として、多くの観光客に親しまれております。

公園内

▼大谷石の採石場跡

 大谷町を中心に産出される大谷石は、東西8km、南北約37km、に分布しています。

 大谷石は今から約2000万年前の海底火山の噴火により噴出した火山灰が海底に堆積してつくられたもので、地質学上の名称は「凝灰岩」と呼ばれています。

 大谷石の採石は江戸時代に農家の副業として始まり、明治時代に入り産業として発達しました。

 当初は露天掘りと呼ばれる地上に現れている岩を採石する手法を用いていまいしたが、現在の採石場は地下数十メートルから百メートル以上もある坑内に移っています。

 採掘された地下空洞の広さは、全体で東京ドーム12個分に相当するといわれています。

 ここ大谷公園では、昭和初期まで露天掘りや天井部だけを残す垣根掘りと呼ばれる方法により採石が行われていました。

 採石は岩の上部から一本ずつ手作業により下に向かって行われ、大谷公園から大谷寺に向かう通路の壁面や東側の壁面には、層の様になっている採石跡を見る事が出来ます。 

親子がえる

▼親子がえる

 公園中央にはカエルの後ろ姿に見える奇岩「親子がえる」があります。

 この奇岩には伝承があり、その昔ある聖僧が仏教を広げるため各地を歩いておりますと、このあたりに蜂の大群が住み着き、住民を苦しめているとの話を耳にされました。

 聖僧は住民を助けようと当地で三七・二十一日の苦行を重ねて観音様を作り上げました。

 そのとき、蜂の大群がこの村に攻めてきました。

 するとどこからともなく「親子がえる」が現れ岩肌にしがみつき蜂の大群と戦い身をもって住民を守ったと云われています。

 それ以来、住民は蛙に感謝し、今も地守神様として子孫にいい伝えております。




▼大谷平和観音

大谷平和観音

 『大谷平和観音』は、太平洋戦争での戦死者を追悼するため、大谷石採石場跡の壁面に昭和二十三年(1948)から6年かけて手彫りで造られた高さ約27㍍の巨像です。

 写真の像左横に見える階段は、観音の頭上付近に設けられた展望台へと続き、頂上からは「大谷公園」や裏手にある「大谷寺」を一望する事が出来ます。

平和観音

 像右手の切り開かれた岩山の奥に本日のメーンイベント「大谷寺」があります。

壁

 人間の手によって切り開かれた岩は、圧巻のスケールです。

 ここは、主に露天掘りとよばれる上から順に岩を掘り出す方法がとられた箇所で、上からコツコツと下に向けて彫った形跡があちらこちらに観る事が出来ます。

 ここを通り抜け「大谷寺」に向かいます。




▼天開山 大谷寺

大谷寺

 崖にめり込んだ『天開山 大谷寺』に到着しました!

 山門を通り、社務所で大人400円/中学生200円/小学生100円を支払い入場してきましたが、2018年11月現在改装中の為、写真を割愛です。

大谷寺

 天台宗の「天開山 大谷寺」は、坂東三十三観音霊場の第十九番札所であり、弘仁元年(810)に弘法大師によって開基されたと伝えられ、多くの人々から崇敬されております。

大谷観音

▼石造千手観音菩薩立像

当山では、平安時代である弘仁元年(810)に洞穴壁面に「空海」が刻んだとされる『千手観音』を御本尊に祀っております。

 この本尊は、日本最古の磨崖仏(自然の内の岩壁に彫刻された仏像)といわれており、石像彫刻中最優秀な技巧を極めたものとして、国指定特別史跡・重要文化財の二重指定を受けております。

磨崖仏

 この他、同時代に造られたとされる「釈迦三尊」、「薬師三尊」、「阿弥陀三尊」像が彫られております。
 ここは、半洞穴である為、外部の音が遮音されており静寂の中参拝する事が出来ます。 




▼宝物館

宝物館

 当山の宝物館には、昭和四十年(1965)の発掘調査により出土した縄文・弥生から歴史時代にまたがる出土遺物が展示されております。 

 写真は、約11000年前に亡くなり埋葬された20歳前後の男性の遺骸で、このままの姿で展示されております。

 遺体が埋葬されている点から想像するに太古の昔から人類に神聖視されてきた場所だと思われます。




▼庭園

弁天堂と白へびの由来

▼弁天堂と白へびの由来

 紅葉の季節にこそ訪れたい境内の庭園には、弁財天が祀られる弁天堂があります。

 弁財天は七福神の中の紅一点で、開運・財運の神様です。

 そのとなりにはコンクリート?で造られた「白へび」も祀られており、この蛇には伝説が残されています。

 昔、この池に毒蛇が住んでおり、毒をまき人々を困らせていました。

 時に大同、弘仁の頃、弘法大師がこの話を聞き、秘法をもって退治したと云います。

 その後、毒蛇は心を入れ替えて白へびとなり、弁財天にお仕えしています。

白へび

 参拝後に、白へびの頭を軽くさすると、御利益があると云われています。

紅葉

 11月初旬に訪れると、真っ赤に染まった紅葉も楽しむ事が出来るので、個人的には秋が最もおススメです!!

▼御止山

紅葉

 当山は、『御止山』の麓にあり、この山は自然の奇岩群と、赤松の織り成す風光明媚な景勝が「陸の松島」と称賛され、国の名勝に指定されております。

 栃木県では日光の華厳の滝に続いて2つ目の指定で、名前の由来は江戸時代、日光輪王寺の宮様の御用山で、秋になると松茸狩りをされました。

 そのため、一般の人々が立ち入ることを禁止され、「おとめやま」と呼ばれてきました。




御朱印

御朱印

 さいごに、御朱印を頂き寺院を後にします。

 以上で、日本最古の磨崖仏が祀られる、崖にめり込んだ『天開山 大谷寺』のご案内となります!!

 太古の昔から、人々に畏敬されてきたであろうこの場所には、神秘的な魅力がありました。

 皆様も訪れてみては如何でしょうか。 御精読有難うございました。




 

▼アクセス

住所:〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町1198