苦を抜いて千二百年!弘法大師が創建したと伝わる『釘抜地蔵』へ潜入調査!

釘抜地蔵(石像寺)

 京都市上京区にある浄土宗の寺院「家隆山 石像寺(しゃくぞうじ)」、通称『釘抜地蔵(くぎぬきじぞう)』へやってきました!!

 この寺院へは、元々は訪れる予定が無かったのですが近くにある「千本ゑんま堂」に行った際に、すぐ近くにある当寺の名前が気になり立ち寄ってみましたが、非常に興味深く、面白い寺院でしたので歴史と、御利益と共に御案内致します。




山門

 当院があるこの地は、かつての京都の三大風葬地(遺体をそのまま放置する葬送)の一つである「蓮台野」の入り口です。 

 前に通る道の名前は、かつて千本の「卒塔婆」があった事から「千本通り」と云われており、今ではその片鱗も分からないですが、京市内で亡くなった人々の遺体が通る葬送の道沿いでした。

 この地と空海(弘法大師)との関係は深く、唐(当時の中国の国名)で仏法を学んできた空海は、京都の風葬地を訪れた際にその無残に転がる遺体を哀れに思い、埋葬を伝えたと云われております。

中門

 早速、表門を通り本堂へと歩みを進めます。

 明らかに小さな寺院にも関わらず、掛かる提灯等から今でも多くの参拝客が訪れる寺院である事が分かります。

境内

 2つの門を通った先の本堂前にやってきました。




▼本堂

本堂

 この「釘抜地蔵」は、弘法大師(空海)によって弘仁十年(819)に真言宗の寺院として創建されたと云われており、創建から約400年程経った鎌倉時代に浄土宗に改宗され、今日に至ります。

本堂内部

 本尊に祀られる「地蔵菩薩」は、弘法大師が唐から持ち帰った石を刻んだと伝わります。

釘抜地蔵の伝説

「釘抜地蔵」のいわれについては、次のような伝説がある。室町時代の終わり頃、紀ノ国屋道林という商人がいた。彼は両手に激しい痛みを感じていたが、どんな治療を施しても効き目がなかった。そこで霊験あらたかな石像寺の地蔵菩薩に7日間の願かけをしたところ、満願の日の夢に地蔵菩薩が現れた。地蔵菩薩は「お前の苦しみの原因は、前世において人をうらみ、呪いの人形(ひとがた)を作ってその手に八寸釘を打ち込んだことにある」と告げ、呪いの人形から抜き取った八寸釘を道林に示して見せた。道林が夢から覚めると、両手の痛みはすっかり消えていた。そして、石像寺に参詣すると、本尊地蔵菩薩の前には血に染まった2本の八寸釘が置かれていたという。 ~wikipediaより~

釘抜き

 この地蔵は苦しみを抜き取るということから苦抜(くぬき)地蔵と呼ばれ、それがなまって「釘抜地蔵」と呼ばれております。

 本堂側面には、奉納された沢山の珍しい「釘抜きの絵馬」が掛けられており、不思議な御堂となっております。

境内

 狭い境内には所狭しと様々な神仏が安置されております。

 それは、明らかに古いものから、近年に奉納されたものまで多岐にわたっております。




▼鎌倉時代の重要文化財

石造弥勒仏立像

 本堂背後にも小さな御堂があります。

石造弥勒仏立像

 その御堂内には、一見無造作とも思えますが鎌倉時代に造られ重要文化財に指定される「石造阿弥陀如来及び両脇侍像・石造弥勒仏立像」が安置されております。

石造弥勒仏立像

石仏の背面に刻まれた銘により、伊勢権守佐伯朝臣為家なる人物が願主となって鎌倉時代の元仁二年(1225)に完成した事が判明しているそうです。




▼お百度参りと御朱印

お百度参り

 当寺でも御朱印を頂こうと社務所へ行くと、「初めて御参拝の方が御朱印をお求めの場合は、お百度参りをお願いしているのですが、如何されますでしょうか?」との事でした。

 ここで「じゃあ、大変そうなので結構です!」とも言えず、仕方なく「お百度参り」の方法を伺って行います。

 ルールは、写真の竹の棒を自分の年齢の数だけ手に持ち、時計回りに歩き本堂「全面」で一礼を行い参拝、時計回りに歩き本堂「背面」で一礼参拝、そして竹を所定の箇所に一本返却を行うという一連の流れを年齢の回数行います。

 最初は、直ぐに出来るだろうと思って気軽に始めましたが、これが中々大変でした。

 また、「お百度参り」開始当初は、気楽に参拝していたものが、御堂を回っているうちに徐々に無意識に熱いものを体の内に感じだし、礼の時の頭も深く下がってきました。

 僕自身、寺や神社巡りは好きですが決して信心深いものでは全くなく、むしろ無神論者ですが、当時の心境を思うと何やら神仏にすがるかの様な心地になりだしました。

 これも、決して不快なものではなく、なんとなく心地の良いもので何とも不思議な感覚となりながらの「お百度参り」をさせて頂く事が出来ました。

御朱印

 無事年齢の35回を廻り、汗だくとなりながら御朱印(300円)を頂く事が出来ました。

 私がお参りをしている時に、私だけでなく数名の方が一緒にぐるぐると廻っておりましたが、遥か御年輩のお婆さんも同じく「お百度参り」をされだしたのですが、竹の棒を片手で持てる私と違い、私の三倍近い本数を持って参っているお婆さんも居られ、その姿が気の毒でならなかったです。




▼さいごに

帰路

 以上で、弘法大師が開山して以来1200年間、人々の苦を抜いてきた『釘抜地蔵』の御案内となります。

 不謹慎ですが、観て楽しい、参って楽しい寺院となっており、寺院巡り初心者の方でも気軽に訪れやすい寺院となっておりました。

 皆様も、京都に訪れた際には参拝しに来ては如何でしょうか。 御精読有難うございました。




▼アクセス

住所:〒602-8305 京都府京都市上京区花車町503